行き場がなく、殺されてきた思いが幽霊になって蘇ります。
作品について
作者:いくえみ綾
掲載誌:comicスピカ(現在はもう発行されていないようです。)(月刊誌)
書籍:幻冬舎コミックス 全3巻
あらすじ
主人公の前に、この世のものではない・主人公しか見えない、幽霊のような人間が、何人も現れます。その幽霊は、だんだんと、過去の出来事と共に正体が明らかになっていきます。同時に、主人公にもどんどん転機が訪れ、最後はこうくるかという終わり方でした。全体的に、切ない物語です。
主要登場人物
清武 迪(男)(きよたけすすむ)
主人公で、売れない個性派・演技派俳優。
高遠 峻(男)(たかとおしゅん)
19で事故で亡くなった、主人公の親友。
日下 苑(女)(くさかその)
峻にずっと片思いをしていたメンヘラ系女子。整形して生まれ変わる。
水澤 かなえ(女)(みずさわかなえ)
ちょっとだけ霊感のある美人女優。
早戸 翼(男)(はやとつばさ)
峻に似ているイケメン俳優。
感想。以下は結構なネタバレです!注意
親友の少年に恋するイケメン
イケメンで人気者なんだけど、実はゲイだという誰にも言えない秘密がありました。高校時代、親友の迪(主人公)にずっと恋をしています。高校卒業後、やっとメールで打ち明けたのに、返事を待たずに19でバイク事故で亡くなってしまいます。メールの内容も切なくて泣けます。
「清く柔く」でも同じような状況がありました。なんにせよ、死んでしまうのはずるいです。
(「清く柔く」のハルタは、カンナに自転車に乗りながらメールを打っている最中に、交通事故で亡くなってしまいます。誰よりも大事にしていた幼馴染のカンナに、好きだという思いをつげられないままでした。)
清く柔くは映画化もされている人気作。主人公が入れ替わるオムニバス形式。
峻が幽霊となって迪の前に現れるのですが…。幽霊としてでも再会できてよかった。だけど、結局のところは死んでますから、生きている者同士のようにはいきません。
お母さんに愛されなかった顔を変える整形少女
苑も、かなり切ないんです…。地味な顔立ちと愛嬌の無さのせいで、なにかにつけて幼いころは美形の姉と兄と比べられます。美形の二人ばかり可愛がられ、そのきょうだいからも、親からも、可愛がられません。「暗い」と言われて友達もできません。
可愛い服が大好きなのに、買ってもらえず、お姉ちゃんがピアノの発表会で着たドレス・赤い靴を「苑もほしい。」と母にねだったのに、母が買ってきたのは地味ーな靴と服…。思わず苑が涙ぐんだところで、「お父さんに怒られるよ!」と叱られるような環境でした。
お母さん、怒り方といい、靴と服のチョイスといい、そりゃないよ。
だけど、起死回生、歌を武器に、整形してクラブ歌手となり、一見すると、性格も愛嬌たっぷりに生まれ変わります。だけど、実はそうではなくて…。
更に、逆境も訪れ、苑を打ちのめしますので泣けました。
整形映えして派手系美女になりますが…。顔だけ変わっても、中身は急に変わらないよね。
主人公は優しさで人を傷つける
いくえみさん(奥田民生さんの大ファンらしいです。)の漫画には良く出てくる男子なのですが、奥田民生さんを10倍かっこよくした感じの見た目です。
誰に対してもものすごく優しくて、一見モテない系なのに、実は傍にいるとみんなが好きになっちゃうような男子です。その優しさで、女の子だけでなく何人も苦しめます。そのうち、俳優としても売れ出して、芸能界にも被害者がひろがっていきますが…。
売れたっておごりたかぶることなく、ずーっと優しい良い子のままです。迪も、自分の気持ちを優先しないで、人を助けることで首を絞められます。自分のことよりも、苦しんでいる人を優先し、やさしくできるってすごいですよね。魅力のある男子を描くのが本当にお上手だと思います。
個人的に、この作品のラストが本当に好きで何回も読んでしまいます。
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